第8章 姫巫女と最初の一週間
そのまま、シオンとハリー、ロンはマリアたちと別れ、約束通り、ハグリッドの家へ向かうべく校庭を横切った。
ハグリッドの家は、立ち入りが禁止されている『禁じられた森』の端にある、木の小屋らしい。
戸口には石弓と防寒用の大きな長靴が置かれている。
ハリーが戸をノックすると、中から戸を引っ掻く音と同時に、唸るような遠吠えが数回聞こえてきた。
「下がれ、ファング! 下がれ!」
その声は、入学式の日の道案内で聞いたものと同じ。
戸が少し開けば、隙間から大きな髭モジャの大男の顔が現れ、シオンはつい身を引いてしまった。
「待て待て! 下がれ、ファング!」
巨大な黒いボアハウンド犬(大型猪狩犬)の首輪を押さえるのに手こずりながら、彼はシオンたちを迎え入れる。
部屋は一部屋で、ハムやきじ鳥が天井からぶら下がり、部屋の隅には巨大なベッドが鎮座していた。
部屋自体は、ハグリッドの巨体から考えると、少し狭いのではないだろうか。
七人で押しかけないで正解だった。
「ま、くつろいでくれや」
ハグリッドはそう言って椅子を勧めてくれる。
彼がファングを離すと、彼は一直線にロンへ飛び掛かり、顔中を舐めまわした。
主人と同じで、巨体だが気のいい性格なようだ。
ハグリッドの話では、少々臆病なところもあるらしい。
「初めまして、シオン・リュウグウです」
「リュウグウ? ほぉ……じゃあ、お前さん。アイツを連れてるのかい?」
ハグリッドが小さな目を瞬かせると、シオンの背後から金色の蛇が現れた。
『久しいな、ハグリッド』
「おぉ……ゲツエイさん。お元気ですかい?」
『そなたほどではないがな』
どうやら、知り合いらしいハグリッドは、月映と二言三言と再会の挨拶を交わすと、ロンへ視線を移す。