第8章 姫巫女と最初の一週間
やがて、薬を作り始めた生徒たちを、スネイプはゆったりとした足取りで見て回る。
少しでも要領の悪い生徒には、厳しく注意をした。
「ロン、もう少し乗せて。まだ二グラム足りないよ。容量を正確に量るのは、薬を作る上でも大切なことだから」
「わ、分かった……後、二グラム……二グラム……」
干しイラクサを量る目盛りが震え、教科書と同じ量を示した。
その近くでは、シェリルが鍋をかき回している。
「魔女になった気分」
「いや……シェリルはもう魔女だから……」
マイペースな彼女に、ハリーはややたじたじなようだ。
「ネビル! まだ山嵐の針を入れちゃダメよ! 火から降ろさないと!」
「あ、ゴメン……マリア」
「もう、気をつけなさい。爆発でもしたら、ただじゃ済まないわよ」
どうやら、マリアとネビルのチームは手間取っているようだ。
主に、おっちょこちょいなネビルが足を引っ張ってしまっているらしい。
一時間後。ようやく、重たい空気が立ち込める地下牢から、シオンたちは出ることができた。
* * *
「ゴメンね、シェリル。僕のせいで、スネイプからネチネチ言われちゃって……」
「別に……気にしてない」
ハリーとシェリルの会話に、シオンはつい先ほどまでの授業を思い出した。
スネイプは、ヘビの牙の砕き方が不十分、角ナメクジの煮込みが甘い、手際が悪いなどと言って、何度もハリーを注意したのだ。
そうなれば、必然的にシェリルも注意を受けることになる。
ハリーが彼女に謝っているのは、そういうことだった。
「気にすることないわよ、ハリー。あなたはそのスネイプから、二点取ったんだから」
「でも、それだって僕の手柄じゃない。シオンが助けてくれなかったら、逆に減点されてたよ」
マリアが励ますが、ハリーは首を振ってそれを否定する。
「まぁ、別にいいじゃん。フレッドとジョージも、スネイプにはしょっちゅう減点されてるんだ」
それは励ましになるのだろうか。
はなはだ疑問だが、そこは突っ込まないでおこう。