第8章 姫巫女と最初の一週間
「ベゾアール石を見つけて来いと言われたら、どこを探すかね?」
そんな石の名前を聞いたのは初めてだが。
もう、この少女に頼るしかないハリーは答えを待つ。
『山羊の胃の中、なのです』
「や、山羊の胃の中」
答えれば、スネイプは「ほぅ」と言って頷いた。
「最後の問題だ。モンクスフードとウルフスベーンの違いは何だね?」
もはや、モンクスフードもウルフスベーンも、草なのかきのこなのかさえ分からなかった。
違いなど簡単だ。名前が違うのだと言ってやりたい衝動を押さえ、少女の答えを待つ。
『どっちも同じ植物、なのです。こんな問題出すなんて、この黒魔人、根性ねじ曲がっていやがるのです』
「……どっちも同じ植物です」
おぉ、植物だったのか。
少女の後半の言葉には激しく同意だが、本人を前に言っていいことと悪いことの区別はつくため、心の中にしまっておくことにする。
「その通り。別名アコナイトとも言うが、トリカブトのことだ。グリフィンドールに二点やろう」
『黒魔人め。点数までケチってやがるのです。姫さまとカナの大手柄なのだから、百点くらい寄越せばいいのです!』
「ありがとう、助かったよ。君、カナっていうの?」
『奏枝なのです。だから、カナなのです』
「そっか。それで、姫さまって……?」
スネイプに座るように指示されて座り、ハリーは肩の上にいる少女に礼を言った。
『「龍宮の姫巫女」さまに決まっているのです! 心優しい姫さまに遣わされて、お前を助けてやったのです!』
ヒメミコ、という言葉には聞き覚えがある。
チラリと隣を見れば、ロンがいて、シェリルがいて、その隣にシオンが座っていた。
彼女はスネイプの授業を聞いていたようだが、視線を感じたのか、大きな黒い瞳がハリーに向けられる。
口パクで「ありがとう」と伝えると、彼女はにっこり微笑んでくれた。