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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第8章 姫巫女と最初の一週間


 ――SIDE・ハリー


 何の球根の粉末を、何を煎じたものに加えるのか分からず、ハリーは答えに詰まっていた。

「何だ? 答えられないのか?」

 答えを急かすスネイプに、「分かりません」と答えようとすると、誰かがハリーの髪を引っ張る。
 振り返れば、手のひらサイズの黒髪の少女が肩に乗っていた。

『こっちを見るなです! 今から答えを教えてやるから、あの陰険な黒魔人に一泡吹かせてやるのです!』

「い、陰険な黒魔人って……」

『いいから、すぐに答えるのです!』

「ポッター、どうした? 何かいるのか?」

 黒い目を細め、睨むようにしてこちらを見る。
 肩に乗った黒髪の少女が耳打ちしてきた。

「い、いえ……何でもありません。あ……アスフォデルの球根の粉末をニガニョモ……ッ、イタッ」

 途中で噛んでしまい、少女に髪を引っ張られる。

「えっと……ニガヨモギを煎じたものに加えると、眠り薬になります。とても強力な薬なので、『生ける屍の水薬』とも呼ばれます」

 ハリーが答えられたことに驚き、スネイプだけでなく、クラス中の生徒が目を丸くした。
 ハーマイオニーも、手を下ろすことも忘れて口を開けている。

「正解だ。なぜすぐに答えなかった?」

 知らなかったからです、と正直に答えられるわけがない。

『思い出すのに時間が掛かったから、と答えるのです』

「お、思い出すのに時間が掛かったからです」

 もう、何だかよく分からないので、言われた通りにしよう。
 色々と吹っ切ると、気持ちが軽くなった。

「そうか。どうやら、『魔法薬学』の教科書を読み込んできたようだな」

 教科書である『薬草ときのこ千種』の本は、目を通しただけで、欠片も頭に入っていないが。
 そんなハリーの心中など当然知らないスネイプは、さらに問題を出してきた。

「では、次の問題だ。教科書を読んだのなら答えられるだろう?」

 この男は、生徒は教科書を丸暗記するのは当然だとでも考えているのだろうか。
 そんなことをしているのは、ハーマイオニー・グレンジャーだけである。
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