第7章 姫巫女とグリフィンドール寮
「……そう、あれはシンシンと雪が舞い始めた、十二月の終わり……あたくしは初めて、本家の敷居を跨いで……」
『待て、ヒマワリ。そこから話し始めると言うことは、かなり長くなるだろう。……よい、お前は下がれ』
回想モードに突入しようとしていたところを止められ、ヒマワリは気分を害したように唇を尖らせた。
「酷いですわ、月映さま! まだ、シオンさまをお見かけしたところにすら、差しかかっていないというのに!」
『また次にしろ。シオンも早く眠らねば、明日の授業に差し障るであろう』
「そうですね」
「確かに、あなたの言う通りだわ」
頷くシオンにマリアが続く。
敬愛するシオンが肯定したからか、ヒマワリも黙ることにしたようだ。
『シオンの家は、シャーロットと同じ……そなたらの言うところの、純血の家系よ』
「聞いたことがあります。東の国にある、魔法族の名家ですよね」
シャーロットの言葉に、月映は『然様』と頷いた。
『だが、そなたらの認識と我らの認識はいささか異なる』
そう。
魔法界では、龍宮一族は純血の家系。
それは、直系一族のみを指す名称だ。
だが、当の龍宮一族にとってその言葉は、龍宮の血を引く全ての分家、傍系も含む。
龍宮では純血の血筋を守っているのは最早直系のみで、分家や傍系の血筋はマグルの血が多く混ざり、最近では分家筋でも、ホグワーツに入学できるだけの魔法力を発現する者が少なくなっていた。