第7章 姫巫女とグリフィンドール寮
「あたくしはヒマワリ・タツガミ――向日葵のように、あなただけを見つめていましたわ!」
「ヒマワリ……タツガミ……?」
辰上 向日葵、と脳内で字が当てはまり、その苗字に心当たりがあった。
『辰上……龍宮の傍系の一つだな』
現れた金色の龍に、マリアとシャーロット、シェリルが何も言えずに目を丸くする。
けれど、ヒマワリだけはその金色の龍――月映に動じることなく受け応えた。
「初めまして、月映さま。……まぁ、何と労(いたわ)しいお姿……初めてお目見えしたときとは、まるで別人ですわ」
『フンッ……好きに言え。このような姿でもなければ、シオンと共に居れぬだろう』
ヒマワリの言い回しに、シオンは違和感を覚える。
一目見たときから――初めてお目見えしたときから。
自分を一目見たとき……とは、もしかしたら、汽車や歓迎会で見かけていたのかもしれない。
けれど、月映のことはそうもいかない。
月映は魔法界へ来てから、ずっと金色の蛇の姿だ。
それ以外の姿など知るわけは――……。
そこまで言いかけて、シオンは「あ」と思い当たる。
「もしかして、去年の『継承の儀式』のときに……?」
「思い出して頂けましたか? ……とは言っても、直接お話するのは、今日が初めてですが……」
悲しそうに、ヒマワリは目を伏せた。
「ちょっとちょっと! 二人で話しを進めるは止めて。私たちの前で話したからには、ちゃんと分かるように説明してちょうだい!」
確かに、ここまで話されれば気になるのは仕方がないだろう。
「わたしも聞きたいです。ね、シェリルちゃん?」
「…………くぅ……」
シャーロットから同意を求められるも、シェリルは夢の扉を叩き始めているようだ。
興味を向けられたからか、ヒマワリはシオンの腕に自分の腕を絡めたまま、話を始める。