第7章 姫巫女とグリフィンドール寮
『おぉぉおおぉぉ! かーわいい一年生ちゃぁん! なんて愉快なんだ!』
高笑いを上げて、ピーブスが新入生へ急降下してくる。
疲れも眠気も忘れたハリーやロン、新入生たちが悲鳴を上げた。
しかし、それを許すわけもない。
人でないモノの相手はシオンの専門だ。
彼女はピーブスに向かって、龍宮の力を込めた札を飛ばす。
直撃した札はピーブスの額にピタリと貼りつき、身体をバチバチと戒めた。
『イタ、イタタッ、イタイ、イタイッ!』
「ピーブス、行きなさい。悪いことをしてはダメ! 次は本当に祓っちゃうからね!」
人でない者相手には強気になれるシオンの言葉に、ピーブスが『ヒィッ』と小さく悲鳴を上げる。
『ご、ゴメンサ――イッ!』
一目散に逃げだしたピーブスが、途中にあった鎧をガラガラと倒して行った。
「すごいな、シオン……ピーブスをコントロールできるのは、『血みどろ男爵』だけのはずなのに。僕ら監督生の言うことでさえ聞きゃしない」
再び歩き出しながら、パーシーが話す。
「びっくりしたよ」
「シオンがいてくれて助かったな」
「お、大げさだよ。わたしはただ……相手が少し得意分野だっただけだし……」
それでも、褒められて嬉くないわけはない。
「でも、気をつけておくに越したことはないよ。……さぁ、着いた」
辿り着いた廊下の突き当りには、桃色の絹のドレスを着た、太った婦人の肖像画が掛かっていた。
婦人は慈愛の笑みを浮かべ、「合言葉は?」と尋ねる。
「《カプート・ドラコニス》」
パーシーがそう答えると、肖像画が前に開いた。
その後ろの壁に丸い穴が空いている。
少し高い位置にある穴をどうにかよじ登ると、そこはグリフィンドールの談話室へと繋がっていた。
円形の部屋には、ふかふかの肘掛け椅子がたくさん並んでいる。