第7章 姫巫女とグリフィンドール寮
グリフィンドール一年生は、監督生に続いて大広間を出ると、大理石の階段を上がった。
ハリーは疲れているようで、少し足取りが重そうだ。ロンも眠そうに目を擦っている。
そういうシオンも、疲れて眠かった。
廊下を通ると、壁に掛けてある肖像画の人物が何かを話しかけてきたが、とても相手にする気にはなれず無視してしまう。
パーシーに続いて引き戸の陰とタペストリーの裏の隠しドアを潜り、たくさんの階段を上ると、不意に彼は足を止めた。
前方に一束の杖が浮かんでいる。
パーシーが一歩進むと、杖がバラバラと飛び掛かって来た。
「ピーブスだ」
パーシーが呼んだ名前には聞き覚えがあった。
玄関ホールの脇の部屋で、ニコラス卿たちが話していた名前だ。
「ポルターガイストのピーブスだよ。ピーブス、姿を見せろ」
ポルターガイスト……本当のゴーストではないと言っていたのは、そのことだろうか。
ゴーストが相手だということは、自分の出番だ。
突然目が冴えたシオンは、袖から紫扇を取り出し、ゴーストの気配がする杖の束へ投げつけた。
『――グァッ⁉』
呻いたピーブスが姿を現す。
意地悪そうな暗い色の瞳を持つ、大きな口の小男だ。
彼は杖の束を掴んで空中に漂っていた。
紫扇には様々な霊的な呪術が掛けられており、その一つが、目に見えないモノを強制的に顕在化させる力だ。