第6章 姫巫女と入学式
「あの、ジョージさん」
フレッドと話しているジョージの会話のタイミングを見計らい、ローブの裾を引っ張った。
「何、シオン?」
「あの……紫色のターバンの先生はどなたですか?」
ジョージと一緒に、フレッドも教師たちの座るテーブルへ目を向ける。
「あぁ、彼はクィリナス・クィレルって言って、闇の魔法に対する防衛術を担当してるんだ」
「見ろよ、ジョージ。クィレルの奴、スネイプに絡まれてビビッてるぜ」
どうやら、黒髪の教師はスネイプと言うようだ。
セブルス・スネイプは魔法薬学の教師らしいが、闇の魔術についても詳しいらしい。
一部では、クィレルの席を狙っていると噂されている。
「――いたっ⁉」
双子から聞いていると、シオンの隣で突然ハリーが額を押さえた。
「ハリー、どうしたの? 大丈夫?」
背中を丸めるハリーの身体を支える。
彼が押さえているのは、ちょうど稲妻の形をした傷のところだ。
そっと手を退かすと、傷が真っ赤に腫れている。
ただの傷ではないのだ。
必要なのは、水で冷やすとか、消毒するとか、そういったものではない。
彼の傷は、ほんの微かだが邪気を纏っている。
恐らく、闇に属する力に触れたのだろう。
「ハリー、少しだけジッとしてて……」
シオンは懐から取り出した紫扇を広げ、言葉を紡いだ。
「――《高天原に神留(かむづま)り坐(ま)せし神より生坐(あれませ)る、祓戸(はらひど)の大神等(おおかみたち)よ。諸々の禍事(まがこと)、罪、穢(けがれ)有らむをば、祓ひ給へ、清め給へと白(もう)す事の由(よし)を、聞食(きこしめ)せと畏(かしこ)み畏みも白す》」
紫扇を幣に見立て、ゆっくりとした動作でハリーに風を送りながら、シオンは祝詞を唱える。
その効果はすぐに現れ、彼の傷口に纏わりついていた邪気がフッと消えた。
痛みも治まったようで、ハリーもホッと身体の力を抜く。