第6章 姫巫女と入学式
「僕、君のこと知ってる! 兄さんたちから君のこと聞いたよ。『ほとんど首無しニック』だ!」
『むしろ、呼んで頂くのであれば、ニコラス・ド・ミムジー……』
しかし、最後まで言わせることなく、黄土色の髪のシェーマス・フィネガンが割り込む。
「ほとんど首無し? どうしてほとんど首無しなの?」
どうやら、『ほとんど首無しニック』というあだ名を気に入っていないようだ。
何度も連呼されて気分を害したらしいニコラス卿が、自分の左耳を掴んで引っ張った。
『ほら、この通り』
まるで蝶番(ちょうつがい)が開くように、頭がグラリと外れる。
話によれば、誰かが首を切ろうとして、やりそこねたらしい。
食事中にそんなものを見せられれば、誰だって気分が悪くなるだろう。
最も、戦時中に亡くなった霊などをよく見ていたシオンは、たとえ食事中とはいえ、今さら何とも思わないが。
少し慣れてきた手つきで、彼女はミートパイを口へ運ぶ。
そんな彼らを満足げに見て、彼は首を戻し、咳払いを一つした。
『さて、グリフィンドールの新入生諸君。今年こそ寮対抗優勝カップを獲得できるように頑張って下さるでしょうな?』
ニコラス卿の話では、六年連続でスリザリンが寮杯を獲得しているらしく、グリフィンドールに住むゴーストとしては面白くないようだ。
特に、スリザリンに住むゴーストである『血みどろ伯爵』とは反りが合わないのか、悔しくて仕方がないとのこと。