第6章 姫巫女と入学式
「ははっ、シオン。ナイフとフォークが逆だぜ」
笑ったのは、ジョージの向こう側にいるフレッドだ。
「え、ぎゃ、逆なの? えっと、持ち替えて……あ、あれ?」
こんなことなら、洋式のマナーを学んでおくのだった。
「違う違う。人差し指を立てて、ナイフの背に添えるんだ。フォークは左手で持って……そう」
「う……使いにくい。お箸、ないのかな……」
そこまで言って、後ろから介添えをしてくれるジョージとの近さに、シオンは固まる。
今の状態に気づいて、彼女は顔を赤く染めた。
「ジョージの奴、やけにシオンに優しいな。気持ち悪っ!」
料理を口いっぱいに含んで言った弟の言葉が耳に届いたのか。
ジョージは席に座り直して、意地悪く笑った。
「ロン、入学祝いに、お前の部屋にプレゼントを届けさせるよ。楽しみにしてて」
「おっ、アレだな! 僕らが一生懸命捕まえたんだ! お前もきっと、泣いて喜ぶぜ!」
便乗するフレッドに、ロンの顔がサーッと青ざめる。
そんなウィーズリー兄弟の会話を聞いていると、不意に視線を感じた。
『美味しそうですね』
そう言ったのは、先ほどの襞の襟服のゴーストだ。
「食べられないの?」
心優しいハリーが尋ねるので、シオンは彼の肩に触れて首を振る。
「ハリー。食べ物は肉体を保つために必要なものだよ。だから、肉体を持たないゴーストには必要ないし、そもそも食べられないの」
そう説明すれば、亡霊も悲しそうに眉を下げた。
『えぇ、お嬢さんの言う通り。かれこれ五百年は食べておりません。でも懐かしくて……あぁ、まだ自己紹介をしておりませんでしたね。ニコラス・ド・ミムジー-ボーピントン卿と言います。お見知りおきを』
グリフィンドールに住んでいるゴーストなのだというニコラス卿が優雅な仕草で礼を取る。
すると、ロンが口に運んだ料理を飲み下して口を挟んだ。