第6章 姫巫女と入学式
『おや、新入生じゃな。これから組分けされるところか?』
声を掛けたのは太った修道士のゴーストだ。
頷いた数人の生徒に、彼はカラカラと笑う。
『ハッフルパフで会えると良いな。わしはそこの卒業生じゃからの』
そう言い残して、ゴーストたちはスゥ…と壁に消えて行った。
「何だ、ゴーストか……みんなが悲鳴を上げるからびっくりしちゃった……月映さま、申し訳ありません」
『シオンが謝ることはない。たかだか亡霊程度で騒ぐ奴らが悪いのよ。身構えて損したわ』
フンッと鼻息荒く消えた月映と、「何だ、ゴーストか」で済ませるシオンに、ハリーとロンが目を丸くする。
「え……シオン、怖くないの?」
恐る恐る尋ねるハリーに、ロンが同調するように何度も頷いた。
「全然怖くないよ。わたし、神社の娘だし。妖祓いも加持祈祷も、幽霊を成仏させるのだって仕事だもん」
むしろ、基本的に山にある神社から出ないシオンにとっては、生きた人間と会うよりも、死んだ人間と会う確率の方が高かった。
そんな話をしていると、マグゴナガルが戻ってくる。
「さぁ、行きますよ。組分け儀式が間もなく始まります。一列になって、ついて来て下さい」
緊張に重たくなった足を踏み出した。
空気もどこか不安を孕み、新入生たちは強張った表情でエメラルド色のローブを追いかける。
黄土色の髪の少年に続くハリーを追って、シオンも足を進めた。
再び玄関ホールへ戻り、そこから二重扉を潜って大広間へ入る。
瞬間――シオンは息を呑んだ。
何百何千にも及ぶ蝋燭(ろうそく)が空中に浮かび、四つの長テーブルが並ぶ空間を照らしている。
テーブルにはすでに上級生たちが着席しており、光り輝く金色の皿とゴブレットが置かれていた。
広間の上座にはもう一つ長テーブルがあり、教師陣が座っている。