第6章 姫巫女と入学式
「ロン、大丈夫? ケガしてない?」
「まぁ、ケガはしてないけど……こんなに暗いんじゃ、歩くのが大変だよ」
シオンが声を掛けると、ロンは恥ずかしそうにしながらぼやく。
確かに、このまま歩いているのは危ない。
シオンは袖口から淡い紫色の扇――『紫扇(しせん)』を取り出した。
「ちょっと待ってて」
そう言って指先を傷つけ、扇に血を滑らせる。
「おいで……《鬼火》――青玉(せいぎょく)、藍玉(らんぎょく)、蒼玉(そうぎょく)」
シオンの呼びかけに、青い光が三つ応じた。
ゆらゆらと揺れるのは、しかし光ではなく小さな炎だ。
「え、何これ……火の玉?」
「《鬼火》だよ。この子が青玉で、この子が藍玉、こっちが蒼玉」
一体一体を紹介すると、《鬼火》たちが嬉しそうにシオンの周りを飛び跳ねる。
「えっと……これがソウギョク?」
「違うよ、その子は蒼玉」
ハリーが指差した《鬼火》の名前が違い、訂正すると、ロンが「全部同じに見えるよ!」と頭を抱えた。
失敬な。全く違うではないか。
《鬼火》たちも怒って火力を強くする。
「全然違うよ! 青玉は鮮やかな青色だけど、藍玉は深みのある青で、蒼玉は少し緑がかってるでしょ? ロンの双子のお兄さんよりずっと見分けるのは簡単だよ」
そう反論すると、ロンがポンッと納得したように手を叩いた。
「そっか! 普段からそっくりな奴らと一緒にいるから、フレッドとジョージを見分けられるんだ!」
シオンにとっては、見分けているつもりもないのだが。
このまま話していては終わらないと思い、シオンは《鬼火》たちに指示を出す。