第5章 姫巫女と最初の友達
「ポッター君。もう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じ道を辿ることになるぞ。君の両親も、何が自分のためになるかを知らなかったようだ。ウィーズリー家やハグリッドみたいな下等な連中と一緒にいると、君も同類になるだろうよ」
自分の家族を侮辱され、ハリーとロンの怒りが頂点に達した。
そして、それはシオンも同じ。
「もう一辺言ってみろ」
どこからそんな声が出たのか。
先ほどまでとは全く違う、低い声でロンが言葉を紡いだ。
「へぇ、僕たちとやるつもりかい?」
「今すぐ立ち去らないならね」
マルフォイの挑発に応じたハリーだったが、クラッブもゴイルも、彼らよりずっと大きい。
「立ち去る気分じゃないな。君たちもそうだろう?」
ゴイルが手を伸ばそうとして来たのを見て、シオンは誰にも聞こえない小さな声で月映を呼んだ。
その声に、月映はすぐに応じる。
煌めく金色の身体をしならせ、鋭い牙を三人に向けた。
『我が姫巫女に仇なす愚か者共よ、今すぐ消えろ‼︎』
空気を震わせる恐ろしい怒気に、マルフォイたちが一斉に震え上がった。
悲鳴を上げて逃げ出す三人を見て、シオンたちは顔を見合わせ、クスクスと笑う。
「ありがとう、シオン」
「助かったよ」
「ううん、助けてくれたのは月映さまだよ。ありがとうございます、月映さま」
礼を言われた月映は、嬉しそうにシオンにすり寄った。
『この程度、礼には及ばぬ。そなたに危害を加える者など、我がことごとく払ってやるわ』
そう言い残して、月映はスゥ…と消える。
「ハリー、あのマルフォイって子のこと、知ってたの?」
「うん。ハグリッドと行ったダイアゴン横丁でね」
どうやら、制服を作った『マダムマルキンの洋装店』で会ったのが最初らしい。
彼は、マグル生まれの魔法使いをホグワーツに入学させるのはおかしいと話したり、ハグリッドを学校の召使い呼ばわりしたり……ハリーはそのときからマルフォイのことが気に入らなかったのだそうだ。