第5章 姫巫女と最初の友達
「僕、あの家族のことを聞いたことがある」
『例のあの人』が消えたとき、真っ先にこちら側に戻ってきた家族の一つなのだとロンが説明してくれた。
彼の人に魔法を掛けられていたのだと言っていたそうだが、ロンの父は出まかせだろうと言っていたそうだ。
血統や権力に固執する純血主義のマルフォイの父親には、『闇の陣営』に味方するのに特別な口実はいらない、のだと。
そこへ、バタバタとハーマイオニーがやって来た。
「いったい何をやっていたの?」
そう尋ねた彼女は、シオンたちの格好を見て呆れる。
「三人とも早く着替えた方がいいわ。私、前の方に行って運転手に聞いてきたんだけど、もう間もなく着くって。まさか、ケンカしてたんじゃないでしょうね? まだ着いてもいないうちから問題になるわよ!」
「ケンカなんてしてないよ。ちょっと因縁をふっかけられたんだ。僕たちは被害者だよ」
訂正するロンとハーマイオニーが睨み合いを始めた。
互いに引く気はないようで、シオンはどうしていいのか分からずオロオロとしてしまう。
「君がここにいると着替えられないんだけど」
ハリーの言葉に、ハーマイオニーがキッと目を吊り上げる。
「ふんっ。みんなが通路で駆けっこしたりして、あんまり子どもっぽい振る舞いをするもんだから、様子を見に来ただけだわ」
彼女は小バカにしたように言い残して去った。
窓から覗くと、外は薄暗く、深い紫色の空の下に山や森が見える。
汽車は徐々に速度を落としているようで、ハーマイオニーの言う通り、ホグワーツが近いようだ。
シオンはハリーとロンと交代で、コンパートメントの中で手早く着替えた。
ローブが短すぎて裾からスニーカーを覗かせるロンに、シオンとハリーが「気にしないで」と気休めの慰めを掛ける。
少しいじけていたロンも、二人の言葉に幾分か持ち直したようだった。
そこへ、車内にアナウンスが響く。
『後五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いて行って下さい』
ハリーは緊張で顔が強張り、ロンは顔を青白くさせていた。
シオンも不安でいっぱいで、そわそわと服の裾や袖を触る。
やがて、汽車は速度を落としていき、最後には完全に停車した。