第5章 姫巫女と最初の友達
「ほんとかい? ハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話で持ちきりなんだけど。それじゃ、君なのか?」
「そうだよ」
ハリーが、短い言葉で素っ気なく返した。
彼のその態度に、どこか違和感を覚える。
少年は性格の悪さが顔に滲み出ており、後ろに控える二人の少年も、似たような顔つきだ。
両脇に立つ姿は、まるでボディーガードのようである。
「あぁ。こいつはクラッブで、こっちがゴイルさ」
ハリーの視線に気づいた青白い少年が、無造作に紹介した。
「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
すると、ロンがクスクス笑いをごまかすように軽く咳払いする。
それをマルフォイは目敏く見咎めた。
「僕の名前が変だとでも言うのかい? 君が誰だか聞くまでもないね。父さんが言ってたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛で、育てきれないほどたくさん子どもがいるってね。そっちの君は?」
マルフォイに名を聞かれて、シオンはビクッと身体を強張らせた。
「し、シオン……リュウグウ……」
です、と小さくつけ加える。
「リュウグウ……極東にある純血の魔法族か。ポッター君、リュウグウ君。そのうち、家柄の良い魔法族とそうでないのとが分かってくるよ。間違ったのとはつき合わないことだね。その辺は僕が教えてあげよう」
マルフォイが手を差し出して、二人に握手を求める。
しかし、ハリーはその手をしばらく見つめて顔を上げた。
「間違ったのかどうかを見分けるのは、自分でもできると思うよ。ね、シオン」
同意を求められ、シオンも激しく頷く。
この少年について行くより、ハリーやロンと一緒にいた方が何億万倍も楽しい。
それに、マルフォイの言うことに対して、一欠片も同調できることがなかった。
冷たく言い放ったハリーに、マルフォイは不愉快そうに眉を寄せる。