第5章 姫巫女と最初の友達
「それで、どうなったの?」
身を乗り出して続きを促すハリーに、ロンは「なーんも」と軽く答える。
「だから大ニュースなのさ。捕まらなかったんだよ」
グリンゴッツに忍び込むなんて、きっと強力な闇の魔法使いだろう、とロンの父は推察ししたらしい。
だが、犯人は何も盗っていくことをしなかった。
ならば、いったいなんの目的で侵入したと言うのだろう。
「当然、こんなことが起きると、陰に『例のあの人』がいるんじゃないかって、みんな恐がるんだよ」
『例のあの人』。
魔法界に来たからだろうか。
それとも、ハリーと知り合ったからだろうか。
その言葉を聞く度に、今まで以上にザワザワと胸が薄気味悪く波を打つ。
車窓には荒涼とした風景が広がり、整然とした畑は見えなくなった。
森や曲がりくねった川、鬱蒼とした暗緑色の丘が通り過ぎて行く。
やがて、ロンは魔法競技のクディッチの話をし出した。
曰く、世界一面白いスポーツらしい。
ボールは四個、選手は七人。
箒で空を飛びながら、ボールを奪い合い、相手のゴールにボールを入れる競技のようだ。
ロンが兄たちと観に行った有名な試合や、欲しい箒などの専門的な話になろうとしたところで、またコンパートメントの扉が開かれた。
現れたのは、体格のいい二人の少年を引き連れた、青白い顔の少年だ。
ハリーは青白い顔の少年に見覚えがあるようで、数度緑色の目を瞬かせる。