第5章 姫巫女と最初の友達
「スキャバーズが黄色になった!」
自分の膝の上で眠るスキャバーズの突然の変化に、ロンが驚きの声を上げた。
「すごいよ、シオン! もう、魔法が使えるんだ!」
ハリーも賞賛の言葉をシオンに掛けるが、少女は困ったように微笑む。
「杖も使わずに魔法を使うなんて……そんなこと、教科書のどこにも……」
『ふん。言ったであろう? 勉強や教科書が全てでないわ』
愉快そうに笑う月映にハーマイオニーがキッと睨むと、黄金の蛇はスゥ…と姿を消した。
しばらく沈黙が続き、ハーマイオニーがハリーとロンへ目を向ける。
「あなたたちは?」
先に名乗ったのはロンだ。
「僕、ロン・ウィーズリー」
「ハリー・ポッター」
ハリーの名前を聞くと、ハーマイオニーは先ほどまでの悔しさを忘れて身を乗り出す。
「ほんとに? あなた、ほんとにハリー・ポッターなの?」
ハーマイオニーの勢いに気圧され、ハリーは返事もできず、コクコクと何度も頷いて肯定を示した。
「私、もちろんあなたのこと全部知ってるわ。参考書をニ〜三冊読んだの。あなたのこと、『近代魔法史』、『闇の魔術の興亡』、『二十世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ」
「僕が?」
知らないところで本に取り上げられていたことに驚いたのだろう。
緑色の目を丸くするハリーに、ハーマイオニーは呆れたように「知らなかったの?」と眉を寄せる。
「私があなただったら、できるだけ全部調べるけど」
その言葉は、シオンの頭にカチンッと来た。
「その言い方はあんまりじゃないですか?」
何も知らないことを責めるような言い方。
普段はあまり怒ることなどないシオンだったが、友人を侮辱されたとなれば話は別だ。
一言口にすれば、怒りが募り、口が勝手に動き出す。