第5章 姫巫女と最初の友達
「ハリーの載っている本を読んだのなら、あなただって知ってるはずでしょ? ハリーは、魔法と隔絶された環境で育って、自分の功績も、魔法使いだってことも知らなかったんです!」
自分が魔法使いだと知らなかった。
両親が魔法使いではない、マグル生まれであるハーマイオニーも同じだろう。
けれど、両親から祝福されたハーマイオニーとは違い、ハリーが魔法界に足を踏み入れたのは、ハグリッドという学校からの使いと教材を買いに行った一度だけだと聞いている。
そんな環境で、一体何を知れと言うのか。
「自分の価値も偉大さも漠然とした中で、いったい何をどう調べるって言うの? 自分の物差しで他人を測らないで! 自分には自分の、相手には相手の価値観があるんだから!」
人を怒鳴ったのは初めてだった。
言いたいことを言い切って、ようやく我に返る。
「ご、ごめんなさい……」
「ううん。ありがとう、シオン」
二人のやり取りに、ハーマイオニーに少しムッとして身を引く。
しかし、気持ちの切り替えが早いのか、すぐに別の話題を出してきた。
「あなたたち、どの寮に入るか分かってる? 私、色んな人に聞いて調べたけど、グリフィンドールに入りたいわ。ダンブルドアもそこ出身だって聞いたもの。でも、レイブンクローも悪くないかもね」
シオンたちの返事も聞かず、ハーマイオニーは立ち上がる。
「もう行くわ。ネビルのヒキガエルを探さなきゃ。あなたたちも、着替えた方がいいわよ。もうすぐ着くはずだから」
言いたいことだけ言って、したい話だけして、ハーマイオニーはコンパートメントを出て行った。
まるで嵐のような少女に、三人は同時に息を吐いて、肩の力を抜く。
「どの寮でもいいけど、あの子のいないところがいいな」
杖をトランクに投げ入れながら、ロンはため息混じりにそう言った。
「へぼ呪文め……ジョージから習ったんだ。ダメ呪文だって、あいつは知ってたに違いない」
ジョージの名前に、シオンは双子の片割れを思い出す。
双子だという話通り、とてもそっくりだったが、フレッドの方がより朗らかな、ジョージはやや思慮深そうに見えた。
「シオンの魔法、すごかったね」
ハリーに言われて、シオンは首を振る。