第20章 姫巫女と大いなる闇
「あの……ダンブルドア先生……あの……《賢者の石》を狙っていたのは、クィレル先生で……先生には『例のあの人』が……」
「ヴォルデモートじゃ」
え、と問い返すと、ダンブルドアはシワの刻まれた目元に真剣な色を宿し、「ヴォルデモート」と繰り返した。
「ヴォルデモートと呼びなさい。ものには必ず適切な名前を使いなさい。名前を恐れていると、そのもの自身に対する恐れも大きくなる。大丈夫。強い気持ちで恐れずに口にすれば、向こうからこちらへやって来ることはない」
何もかも、シオンの恐れすら理解するダンブルドアに、シオンは一つ頷く。
「ヴォルデモートを倒すことはできませんでした。最後の最後で逃げられてしまって……すみません」
「気にすることはない。君たちが無事でよかった」
心の底から安堵したダンブルドアの様子が伝わってきて、シオンの表情も自然と綻んだ。
「ダンブルドア先生。ヴォルデモートは、ハリーから《賢者の石》を奪うことができませんでした。理由は分かりませんが、ハリーには強い加護の力が働いていたように感じます」
「さよう。ハリーの母親リリー・ポッターが、死の間際にハリーへ掛けた『愛情』じゃ。それが、ハリーをクィレル先生とヴォルデモートから守ったのじゃ」
言いながら、ダンブルドアはハリーの頭を一撫でし、ポケットから何かを取り出した。
真っ赤な血を固めたような石――《賢者の石》だ。
「また狙われるかもしれません。ダンブルドア先生、早く別の場所に……」
すると、ダンブルドアは「いや」と首を振る。