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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第20章 姫巫女と大いなる闇



『こいつは嘘を吐いている……嘘を吐いているぞ……』


 再び冷たい声が部屋に響いた。
 その声に、クィレルがハリーの肩を激しく揺らす。

「言え! ポッター、本当のことを言うんだ! 今、何が見えたんだ⁉」

「違います。僕はちゃんと本当のことを……」


『俺様が話す……直(じか)に話す……』


「ご主人様、あなた様はまだ、充分に力が戻っていません!」

 真っ先に反応したのはクィレルだった。しかし、彼の言葉に冷たい声音は『この程度ならば問題ない』と返した。

 シオンとハリーは揃って息を呑む。指一つ動かすこともできなかった。
 瞬きすらできないまま、二人は頭に巻いた紫色のターバンを解くクィレルを見つめていた。

 ゆっくり、ゆっくりとターバンを解いたクィレルは後ろを振り返る。

「ひ……っ」
「あぁ……っ」

 二人は思わず悲鳴を上げた。彼の後頭部には、もう一つの顔があったのだ。
 この世に、これほどまでに恐ろしい顔が存在するのか。
 蝋のように白い顔、目はギラギラと血走り、鼻は蛇のような裂け目になっている。
 深く息を吐き出したその顔は、おもむろに口を動かした。


『ハリー・ポッター……』


 名前を呼ばれたハリーが一歩身を引く。
 シオンは震える心を叱咤し、ハリーの傍に駆け寄った。

「ヴォルデ、モート……」

 ハリーの呼びかけに、恐ろしい顔は『そうだ』と頷く。


『この有り様を見ろ。ただの影と霞に過ぎない……誰かの身体を借りて初めて形になることができる、この有り様を……ここしばらくは、ユニコーンの血が俺様を強くしてくれた……だが、命の水さえあれば、俺様は自身の身体を創造することができるのだ……』


 やはり、ユニコーンを襲っていたのは彼らだったのだ。
 自らの思惑のために他者を傷つける、最低な行為を……そのせいで、純代(すみしろ)も命を落としかけ、多くのユニコーンが死んでしまった。
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