第20章 姫巫女と大いなる闇
「どうしよう……何とか、クィレル先生の気を逸らさないと……」
「僕がやってみる」
そう言って、ハリーはクィレルへ呼びかけた。
「スネイプは僕のことを憎んでた。それなのに、どうして僕を助けようとしたんだろう?」
「あぁ、そうだ。スネイプはお前を憎んでいた。お前の父親とあいつはホグワーツの同窓で、互いに毛嫌いしていたんだ。だが……殺そうとは思わないさ」
そうか。嫌いな人間の子どもだから、スネイプはハリーを嫌っているんだ。
いや……嫌悪と憎悪は違う感情だ。嫌いという感情から憎しみは生まれない。
スネイプがハリーを憎むのは、本当にクィレルが言った通りの事情なのだろうか?
そこまで話して、クィレルは再び鏡に向かった。
「いったいどうなっているんだ……『石』は鏡の中に埋まっているのか? 鏡を割ってみるか?」
シオンは頭を働かせた。
どうすれば、クィレルより早く《賢者の石》を手に入れることができるのか。
《みぞの鏡》を調べようにも、そんな行動を取ればすぐに阻止されるはず。
「シオン。僕、思ったんだけど……」
ハリーが小声で話しかけてきた。
「僕たちが今、何よりも欲しいのは『石』だ。そうだろう? クィレルより先に《賢者の石》を見つけたい。なら、僕たちが《みぞの鏡》を見れば、『石』を見つけた姿が映るはずだ。つまり……」
「……《賢者の石》がどこにあるか分かる。そういうこと?」
うん、とハリーが肯定する。
「シオン、この縄をどうにかできる?」
「分かった。ジッとしてて……《斬(ざん)》」
《言霊》で縄を切り、拘束から逃れた。そして、息を殺し、そっと鏡に映るよう左へ移動する。