第20章 姫巫女と大いなる闇
「私はトロールについては特別な才能がある……まさか、前の部屋にいたトロールを倒してしまうとは思わなかったが……リュウグウ、ハロウィーンのときも今回も、倒したのはお前だな。どうやら、強いモンスターを何体も従えているらしい。本当に、目障りな小娘だ」
忌々しそうに吐き捨てるクィレルに、シオンの身体は強張る。
それを他所に、クィレルはフイッと背中を向け、部屋の奥に鎮座した鏡へ目を向けた。
「この鏡が《賢者の石》を見つける鍵なのだ」
鏡の枠をコツコツと叩きながら、クィレルはブツブツと何かを呟いている。
「《みぞの鏡》だ……」
「《みぞの鏡》……あれが……」
ハリーが小さな声でシオンに耳打ちした。
クリスマスの時期に、ハリーが夢中になったという鏡だ。
クィレルの話を聞く限り、《賢者の石》を見つけるにはあの鏡の仕組みを知らなければならないらしい。
「ゲツエイは何をしてるの?」
「今、月映さまに助けを求めても、この状況を打開することはできないよ。《賢者の石》を手に入れなきゃ……」
拘束を解くことは可能だが、《賢者の石》を見つけないことには、後にも先にも行けない。
ハリーと小声でやりとりをしている間も、クィレルはずっと鏡を調べていた。鏡の裏を細かく見て、また前に回って、食い入るように鏡に見入る。
「『石』が見える……ご主人様にそれを差し出しているのが見える……でも、いったい『石』はどこだ?」
鏡に夢中でこちらに見向きもしなくなったクィレルに、シオンは歯噛みした。
このままクィレルが鏡を調べ続け、《賢者の石》を見つけてしまったら終わりだ。