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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第19章 姫巫女と隠し扉の罠


「ハリー、シオン。気をつけて」

「……うん」

「分かってる。ハーマイオニー、君はこれを」

 ハリーは、ハーマイオニーが『紫の炎を潜って戻れる』と推理した丸い瓶を彼女に手渡した。

「シオン、布のモンスターを出せる? ハーマイオニーとロンを四階の廊下に戻さないと」

「分かった」

 シオンはすぐに《一反木綿》の雲河を呼び出し、ハーマイオニーを乗せる。

「ハーマイオニー、よく聞いて。その小瓶の薬を飲んだら、ロンを連れてここを出るんだ。そしたら、すぐにふくろう小屋に行って、ダンブルドアに手紙を送って。ダンブルドアがいないと……僕とシオンの力だけじゃ、しばらく食い止めるので精いっぱいだと思う」

 頷くハーマイオニーに、ハリーは瓶の薬を飲むように促す。

「ハーマイオニー、大丈夫?」

「えぇ、大丈夫。氷みたいに冷たいけど……毒ではないみたい」

 ホッと安堵の息を吐いたシオンは、雲河に行くよう指示を出した。

「ハリー、シオン……二人は偉大な魔法使いだわ。勉強よりもうんと大切なことを知ってる。勇気とか、友情とか……ハリーとロン、そしてシオンが、私に教えてくれた。二人とも……死なないでね。絶対よ!」

 紫の炎を潜って、ハーマイオニーを乗せた雲河の影が遠く消える。
 それを確認し、ハリーは一番小さな小瓶を手に取り、蓋を開けた。ハーマイオニーが、『黒い炎を抜けて先に進める』と推理した瓶だ。小瓶にはたっぷりと薬が入っている。

「まずはわたしが……」

「いや、僕が飲むよ」

 そう言うや否や、ハリーは小瓶の中身を一口飲んだ。

「う……」

「ハリー、大丈夫?」

「氷みたいに冷たい……けど、大丈夫。シオン、無理しなくてもいいよ。僕は一人でも……」

 シオンはハリーの言葉を全て聞くことなく、彼の手から小瓶を奪い、残りを飲み干す。ハリーの言う通り、氷のように冷たい液体が身体を駆け抜けた。

「わたしは行く。止めてもダメだよ、ハリー。ハーマイオニーとの約束だし……わたしも、ハリーの力になりたいから」

 シオンの黒い瞳に覚悟を見たのか、ハリーは「分かった」と頷いた。

 二人は気を引き締め、黒い炎に手を伸ばす。熱さは感じない。
 ゆっくりと足を踏み締め、二人は炎を抜けた。
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