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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第19章 姫巫女と隠し扉の罠


「ロン、しっかりして!」

 悲鳴を上げるようにして叫ぶハーマイオニーに被せて、シオンもロンに呼びかけた。

「ハーマイオニー、ロンを寝かせて」

 ロンを抱き上げていたハーマイオニーに言って、シオンはロンの身体に触れ、容体を確かめる。

「命に別状はなさそう……でも、腕の骨が折れてるし……頭も強く打ってる。安心はできない……」

「シオン、助けられる⁉︎」

「助けてみせる、絶対に」

 縋るようなハリーの緑色の瞳に頷き、シオンは薬師如来印を組んだ。


「《オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ》」


 何度も繰り返す。

 大丈夫。ロンは気を失っているだけで、傷も深くない。あのときのユニコーン――純代(すみしろ)よりも傷は浅かった。

 やがて、微かに身じろぎをし、規則正しい寝息が聞こえてくる。

「――……もう大丈夫……」

 シオンの言葉に、ハリーとハーマイオニーは安堵の息を吐いた。
 三人は顔を見合わせ、先へ進む扉を見る。

「次は何だと思う?」

「最初の《悪魔の罠》は、たぶん薬草学のスプラウト先生だと思う」

 シオン推測に二人も同意を示す。

「次の鍵の鳥は、フリットウィック先生だわ。鍵に魔法を掛けたのよ」

「チェスの駒を変身させて命を吹き込んだのはマクゴナガルだろうね」

 残るのは、『闇の魔法の防衛術』を担当するクィレルと、『魔法薬学』のスネイプだ。

 ゴクリと唾を呑み込み、ハリーが扉を開く――と、途端に激しい異臭が鼻についた。顔を顰めつつ目を向ければ、巨大なトロールが太い棍棒を持って待ち構えている。

「クィレルの罠だ」

 呟くハリーを押しのけ、シオンは前へ出た。

「危ないよ、シオン」

「大丈夫、わたしに任せて、二人は二十秒――……ううん、十秒間だけ耳を塞いで、目を閉じて。何が起こっても開けちゃダメだよ」

 二人が首を傾げつつも耳を押さえ、目をギュッと瞑ったのを確認し、シオンはトロールを見据える。
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