第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「ロン、ナイトが……」
「大丈夫だよ、ハリー。君があのビショップを取るためには、道を空けておかないと……シオン、進んで」
「う、うん……」
ロンのことを信じている。けれど、震えが止まらなかった。
こちらが勝っているのか、負けているのか。それさえ、シオンには分からない。
しばらくして、盤上の駒が半分以下になった頃、ロンがやけに長考する。そして、短く呟いた。
「――これしか手がない」
そう言って、ロンがハリーへ指示を出す。
「ハリー。次の手で、僕はクイーンに取られる。そうしたら、君がキングにチェックメイトするんだ!」
「そんな!」
叫んだのはシオンだけではなかった。ハリーも、ハーマイオニーも叫んだ。
けれど、シオンたちの制止に頷くことはなく、ロンは冷静に、まるで言い聞かせるようにして言う。
「これ以外に手はない! スネイプに《賢者の石》を渡してもいいのか? 僕たちはそれを止めに来たんだろう? 違う?」
「それは……」
ギュッと手を握りしめて震わせるシオンの近くで、ハリーが奥歯を噛み締める音が聞こえた。
「――分かった」
「任せたぞ、ハリー」
震える声で頷いたハリーに、ロンは力強い笑みを見せる。そして、最後の指示を出した。
「ナイトをh3へ…………――チェック」
ズッと、ロンの乗る黒馬が動き――止まる。
目の前には真っ白なクイーンの石像が鎮座していた。そのクイーンは手に持っていた剣を振り上げ、ロンの黒馬の石像に突き立てる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ――――ッ!」
ロンの悲鳴が上がる。それでも、動くわけには行かなかった。
その場に倒れたロンの生死も確認できないまま、ハリーは斜めに足を進め、白いキングの石像と相対する。
「――チェックメイト」
ハリーの言葉に、白の王が王冠を脱いだ。それを確認して、シオンたちはロンへ駆け寄る。