第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「どうしたらいいんだろう?」
呟いたハリーに、シオンはぐるりと周りを見回した。黒と白の格子模様の床に、対を成す白と黒の石像……これには見覚えがあった。
「見れば分かるよ……」
冷や汗を流すロンが、不敵に笑った。
「チェスだ。向こう側に行くには、チェスで勝たなくちゃいけないんだ」
ロンの推測を肯定するように、空間を囲む炎が爆ぜる。
ゴクリと息を呑むシオンたちに、ロンが手早く指示を出した。
「ハリー、君はキング側のビショップ、シオンはクイーン側のビショップ。ハーマイオニーはその隣のルークだ。僕はナイトになる」
シオンたち四人が、それぞれ黒い駒の代わりとなるらしい。
四人が盤上へ上がると、四人に対応する駒が盤上を下りた。唯一残ったのはナイトの馬だったが、その馬にはロンが跨る。
先手は白の駒。白い石像の兵士が勝手に進み出た。チェスのルールをよく理解していないシオン、ハリー、ハーマイオニーは、全てをロンに委ねる。
序盤の戦いで最初に駒を取ったのは、白の方だった。白いポーンが剣を抜き放ち、黒いポーンを砕く。破片が散らばり、シオンの心は竦み上がる。
こんなもので攻撃されて、生きていられるのだろうか?
青ざめたのはシオンだけでなく、ハリーも、ロンも、ハーマイオニーも、恐怖に顔を強張らせている。
「ハリー、斜め右に四つ進んで」
ロンの指示に従い、ハリーがゆっくりと足を進めた。
戦いは過激さを増し、一つ、また一つと駒が減っていく。それはシオンたちの味方である黒い駒であり、敵の白い駒でもあった。次々に砕かれ、石クズとなっていく。