第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「ハリー、ロン。動いちゃダメだよ。じっとして!」
シオンは絡まる蔓に耐え、動くのを止めた。
「シオン、キミは正気なのか⁉」
悲鳴を上げるロンにハーマイオニーも叫ぶ。
「ロン、シオンの言う通りにするのよ! じゃないと蔓が絡まって死んじゃうわ」
ハーマイオニーも抵抗を止める。
シオンとハーマイオニーの身体は蔓に呑み込まれた。蔓の下には、冷たい石で造られた通路が続いている。
「シオン、ハーマイオニー!」
ハリーの声が聞こえた。
「わたしたちは大丈夫!」
「落ち着いて、ジッとするのよ! 私たちを信じて!」
シオンとハーマイオニーの訴えが届いたのか、やがて、蔓に呑み込まれたハリーが落ちてきた。
「ここは……」
「ハリー、よかった。ロンは?」
すると、蔓の上からはハリーを呼ぶロンの声が聞こえる。
「ロンはジッとしてないの?」
「パニックになって、余計に暴れてるみたい」
「ロン……どうしよう……そうだ、《悪魔の罠》の弱点が……」
シオンの言葉に、ハーマイオニーも記憶を辿り始めた。
「《悪魔の罠》、《悪魔の罠》……」
「《悪魔の罠》、暗闇と湿気を好む植物……苦手なものは……」
記憶を辿るシオンの脳裏に、暖かな温もりの光が過る――そうだ。
「「太陽の光!」」
目を合わせ、シオンとハーマイオニーは杖を取り出し、絡み合う蔓に向けた。
「「《ルーマス・ソレム(陽の光よ)》!」」
目も眩むほどの暖かな光に怯んだのか。蔓は苦しむように縮み上がり、ロンを解放した。蔓の下に降りてきたロンは、大きく息を吐く。
「……はぁ、助かった……」
「シオンとハーマイオニーが、薬草学を勉強しててよかったよ」
ハリーの賞賛に、ハーマイオニーは得意気な笑みを見せた。シオンは気恥ずかしくて俯いてしまう。
四人は石の壁で覆われた通路をひたすら進んだ。遠くでは微かに水滴の落ちる音が聞こえ、ビクリと身体を震わせる。
やがて、ロンが立ち止まった。