第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「何か聞こえないかい?」
言われて耳を澄ますと、確かに音が聞こえた。
石の道が続く前方から、何かが擦れるような軽やかな音が。
「何だろう、この音……」
「分からない……羽の音みたいに聞こえるけど」
シオンとハリーは首を傾げるが、ここで考えても埒が明かない。
四人は意を決して先を進んだ。
通路が開けた先には、輝く空間が広がっていた。
天井は高くアーチの形をしている。天井には光り輝く無数の小鳥が、空間いっぱいに飛び回っていた。向こう側には、輝く空間に似つかわしくない、分厚い木の扉がある。
「僕たちが部屋を横切ったら、鳥が襲ってきたりして……」
「ちょっと、ロン。不吉なこと言わないでよ!」
おどけるロンに、ハーマイオニーが目くじらを立てた。
それほど獰猛そうには見えないが、一遍に襲ってきたらと考えると恐ろしい。
そんなことを考えていると、ハリーが唐突に走り出した。
「ハリー!」
止める間もなく空間を横切るハリーを追いかけるが、鳥が襲ってくる気配はない。
「……もう、先に行くなよな」
「ごめん、でも……」
そう言いながら、ハリーが扉の取っ手に手を掛ける。
「……開かない」
四人で顔を見合わせ、今度はロンが開けてみることにした。しかし、押しても引いても、扉はピクリともせずに沈黙を貫く。四人で力を合わせてみたが、結果は変わらなかった。
「《アロホモラ(開け)》!」
ロンが杖を手に呪文を唱えるが、やはりダメだった。
「鳥よ! 鳥はただ飾りでここにいるんじゃないはずだわ」
四人は注意深く鳥を観察する。頭上高く舞う鳥に、ハリーがハッと叫ぶ。
「鳥じゃない! 鍵だ! 羽の生えた鍵なんだ!」
シオンは空間を見渡す。そして、壁にかかった箒を見つけた。
「ハリー、箒が!」
「ナイスだ、シオン!」
ハリーは壁にかかった箒の前に立ち、挑むように天井を見上げる。