第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「うん、ごめんね。キライになった?」
「まさか。あなたを嫌いになんてなりませんわ。ハリーたちのことは嫌いになりそうですけど……」
嫌いになりそう……でも、嫌いなわけではない。
言葉の意味を正しく捉え、シオンはヒマワリの目を小さな掌で覆った。
「ちゃんと帰ってくるよ。ヒマワリたちのところに……目が覚めたら、全部終わってるから。だから、良い夢を。《おやすみ――大好きな、わたしのお友だち》」
手を離せば、ゆっくりとヒマワリの身体が傾ぎ、ネビルへ覆いかぶさるようにして倒れる。
「何をしたの、シオン?」
「大丈夫だよ、ハリー。眠っただけだから」
《言霊》を使って、ヒマワリを眠らせたのだ。
訓練すれば、力を乗せた言葉を放つことで、相手を思い通りに操ることや、術や魔法を強化することもできる。
害がなかったとしても、人間に術を掛けることはあまり好まないが、今は仕方がないだろう。
シオンたちはネビルとヒマワリを二人がけのソファーにそれぞれ横たえ、毛布を掛けてやった。
「さぁ、急ごう」
透明マントにハリー、ロン、ハーマイオニーが隠れ、シオンは《一反木綿》の雲河に乗り、《摩利支天隠形法》を発動する。
マントからは三人の足が見えていたが、シオンの術のお陰で周囲からは確認できない。
シオンたちはフィルチやミセス・ノリス、ゴーストなどを警戒しながら、仕掛け扉へ急いだ。
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