第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「……ネビル……本当はこんなことしたくないけど、時間がないの。許してね……」
そう言って、ハーマイオニーが杖を取り出し、ネビルに向けた。
「《ペトリフィカス・トタルス(石になれ)》!」
瞬間、ネビルの身体が不自然に強張り、彫像のように固まったかと思うと、床へうつ伏せに倒れる。
「ネビル!」
ヒマワリが駆け寄り、床へ膝をついた。
「『全身金縛り』を掛けたの。時間が経てば動けるようになるわ」
ハリーたちへ囁くように説明するハーマイオニーに、シオンはホッと安堵の息を吐く。
ネビルを抱き上げるヒマワリへ、シオンはゆっくりと歩み寄る。
「ヒマワリ……ヒマワリはどうして、わたしにここまでしてくれるの?」
初めて会ったときから好意を向けてくれていた。
いつも愛情を向けてくれて、たくさん心配してくれていた。
シオンが問うと、ヒマワリは泣きそうな瞳で見上げ、ポツリポツリと言葉を紡ぐ。
「継承の儀式で、初めてシオンさまを見ました。境内でたくさんの妖たちに囲まれて……『自信がない』と零していたんです」
そのときのヒマワリは、周囲の話から、シオンが本家の娘であると知っていた。
「それを見て思いました。『こんな子が本家の娘なんだ』って。あたくしは、『少なくともこの本家の娘(こ)よりは、自分の方が姫巫女に相応しいだろう』って。そう、過信しました」
そして、本番――ヒマワリの舞に祭神は応えなかった。そのことにヒマワリは何も感じなかった。まぁ、仕方がない。その程度。
しばらくして、シオンが舞台に上がり、ヒマワリは息を呑んだ。
シオンの纏う空気が、先ほど見たときと全く違ったからだ。