第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「ダンブルドア先生は明日お帰りになります。あなた方がどうしてあの『石』のことを知ったのか分かりませんが、安心なさい。盤石の守りですから、誰も盗むことはできません」
「でも、先生……」
「二度同じことは言いません。四人とも外に行きなさい。せっかくのいい天気ですよ」
言い募ろうとするハリーを制し、マクゴナガルはエメラルド色のローブを翻して去って行った。
「こんなときにダンブルドアがいないなんて! 魔法省の手紙は、ダンブルドアを学校から遠ざけるためにスネイプが送ったんだ!」
「……――今夜だ」
ロンが悪態を吐く中、ハリーは低い声で唸るように続ける。
「スネイプが仕掛け扉を破るなら今夜だ。必要なことは全部分かったし、ダンブルドアも追い払った。こんな絶好のチャンスはない」
「でも、私たちに何ができるって……」
ハーマイオニーが言いかけて、止めた。
大きな影が落ちてきて、四人は揃って振り返る。
「やぁ、こんにちは」
そこには、いつものように隙のない出で立ちで、不気味なほどに愛想よく微笑むスネイプが立っていた。
「こ、こんにちは……」
挨拶を返さなかったと減点されてはたまらない。
シオンが震える声で返すと、ハリーたちも同じように挨拶をする。
そんな四人を、スネイプはじっと見て、歪んだ笑みを深くした。
「諸君、もっと慎重に願いたいものですな。こんな天気のいい日に室内をうろついていては、何か企んでいるように見えますぞ。グリフィンドールとしてはこれ以上減点される余裕はないはずだろう」
グッと、ハリーが奥歯を噛み締める。
「行こう、みんな」
シオンたちを促し、ハリーは外へと向かう。そんな四人をスネイプは呼び止めた。
「ポッター、警告しておく。これ以上、夜中にうろついているのを見かけたら、我輩が自ら君を退校処分にするぞ。さぁ、もう行きたまえ」
そう言い残して、スネイプは大股に職員室へ歩いて行く。その背中を見送り、大きな背中が見えなくなったところで、ハリーは幾分か冷静な調子で言葉を紡いだ。