第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「こんなところで何をしているんですか?」
ミネルバ・マクゴナガル。
ホグワーツの副学長である彼女ならば、校長室の場所も知っているだろう。だが、素直に聞いて教えてもらえるか。
そんなことを考えるシオンを余所に、ハーマイオニーが口を開いた。
「ダンブルドア先生にお目にかかりたいんです!」
「は、ハーマイオニー!」
ストレートに正面から直行するハーマイオニーに、シオンたち三人は面食らった。当然、マクゴナガルも怪訝な表情を見せる。
「ダンブルドア先生にお目にかかる? 理由は?」
「それは……」
《賢者の石》の件で……とは、さすがのハーマイオニーも言わない。それを言えば教えてもらえないということは、賢い彼女も分かっている。
理由を言わない四人に、マクゴナガルは嘆息した。
「ダンブルドア先生は、十分前にお出かけになりました。魔法省から緊急のふくろう便が来て、ロンドンへ立たれたのです」
「い、いらっしゃらないんですか⁉︎」
絶句するシオンに、マクゴナガルはますます眉を寄せる。
「あなたたちは、ダンブルドア先生に何を伝えたいんです?」
すると、ハリーが意を決したようにしてマクゴナガルを見上げた。
「《賢者の石》について」
愚策だとは思わなかった。ダンブルドアがいないのならば、マクゴナガルに伝えて警戒してもらえばいい。
確か、前にハグリッドが上げた石を守る者の中に、マクゴナガルの名前も入っていたはずだ。
ハリーの回答はマクゴナガルも予想していなかったようて、「どうしてそれを……」と、彼女は唇を震わせる。
「スネー……じゃなくて。誰かが石を盗もうとしています。だから、ダンブルドア先生に話さなくちゃ……」
スネイプ先生が、と言おうとしたハリーの足を軽く蹴って、シオンはハリーを止める。
犯人が誰なのかは、シオンの中でまだ確定していないし、無闇に教師の名前を出すのは得策ではない。
マクゴナガルの瞳には、驚きと同時に疑いの色も混ざっている。けれど、嘘を言っていないのは分かるはずだ。