第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「三頭犬(ケルベロス)なんて、たとえホグワーツだって、そんなに何匹もいねぇんだ。だから、俺は言ってやったよ。『フラッフィーなんか、宥め方さえ知っていれば、お茶の子さいさいだって。ちょいっと音楽を聞かせれば、すぐねんねしちまう』って……」
「そ、それも……話したの……?」
シオンの言葉に、ハグリッドは「しまった!」という顔をする。
「お前たちに話しちゃったいかんかった! 忘れてくれ!」
そう彼が言い終わるのを待つことなく、シオンたち四人は急いで駆け出した。後ろから「どこに行くんだ?」というハグリッドの声が聞こえるが、シオンたちの耳には届かない。
校庭の明るさも分からず、玄関ホールまでが遠く感じられた。それくらい、四人の頭の中はぐるぐるとしていた。
ただ一つ分かるのは、ハグリッドにドラゴンの卵を譲ったのは、《賢者の石》を狙う者だということ。犯人は、フラッフィーの突破の仕方を知ってしまったということだ。
「ダンブルドア先生のところに行かなくちゃ。きっと、ハグリッドに声を掛けたマントの人物はスネイプかヴォルデモートだったんだ!」
「ダンブルドア先生がわたしたちの言うことを信じてくれればいいけど……」
子どもの戯れ言だと一蹴される可能性もある。
四人は廊下を駆け回り、校長室を探した。今まで近づく理由もなかったし、誰かが校長室に呼ばれたという話も聞かなかった。
「ゲツエイは校長室がどこにあるか知らないの?」
ハーマイオニーの呼びかけに、月映が金色の軌跡を描いて現れる。
『残念ながら知らぬな。一つ言えるとするならば、アルバス・ダンブルドアは、そなたら子どもの言うことを、戯れ言などと嗤わぬことぐらいだ』
シオンの心中を察したような言葉にハッとさせられると同時に、エメラルド色のローブを翻してマクゴナガルが現れた。