第5章 姫巫女と最初の友達
「ご、ごめんなさい。わたしも見てなくて……」
「いなくなっちゃった。僕から逃げてばかりいるんだ!」
ワッ…と泣き出した少年に、シオンは「泣かないで」と声を掛けた。
数秒、ジッ…と少年の顔を見つめたシオンは、ニコリと微笑む。
「大丈夫、すぐに見つかります。失せ物の相は確かに出てるけど……すぐに見つかるみたいですから。見かけたら、声を掛けますね」
優しく声を掛ければ、戸惑いながらも少年はしゃくり上げて頷いた。
小さく「ありがとう」と礼を言い、少年が出て行く。
「ほんとに見つかるの?」
ハリーが尋ねると、シオンが答えるより早く、どこからともなく月映が現れた。
『疑うか、ハリーよ。シオンの占(せん)は百発百中。シオンが断言したのだ。蛙の一匹や二匹、その辺からすぐ出てくるわ』
月映は得意げに語るが、出てくるのは一匹である。
すると、ロンが「でもさ」と切り出した。
「どうしてそんなに気にするのかなぁ? 僕がヒキガエルなんか持ってたら、なるべく早くなくしちゃいたいけどね」
『ロンよ、それは乱暴な考え方というもの。あの泣きべそ小僧にとっては、家族も同然だったのだろう。たとえ、それがヒキガエルだったとしてもな』
諭すような月映の口ぶりに、ロンはすぐに「そうだね」と頷く。
「僕もスキャバーズがいなくなったら、きっと大急ぎで探すよ」
そんなスキャバーズは、ロンの膝の上で眠り続けていた。
「そういえば、昨日、少しは面白くしてやろうと思って、黄色に変えようと魔法を使ったんだ」
「魔法?」
魔法と聞いて、ハリーが身を乗り出して興味を示す。
「うん。でも、呪文が効かなかった。やってみせようか――見てて」
ロンはトランクを引っかき回し、ボロボロの杖を取り出した。
端から何やら白いキラキラするものが見えている。