第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「シオン、どこに行くの?」
ハーマイオニーの問いに、シオンは「ハグリッドのところ」と簡潔に答えた。
「今、気づいたんだけど……ハリー、ハグリッドって、ずっとドラゴンが欲しかったんだよね?」
「うん。そう言ってたよ」
けれど、おかしな話だ。
ドラゴンが欲しくて堪らないハグリッドの前に、たまたまドラゴンの卵を持った人物が現れ、たまたま声を掛けてきて、たまたま賭けを持ち掛けて来た。
それは本当に『たまたま』なのか。
そう話すと、ロンが「そんな偶然もあるさ!」と返してくる。
「そうだね。でも、意図的に起こされた偶然だとしたら、それはもう偶然じゃない」
「シオンの言う通りだ」
「何が言う通りなの?」
納得顔のハリーに、ハーマイオニーが焦れたように聞いた。
「魔法界の法律で禁止されているのに、ドラゴンの卵を持ってうろついている人がざらにいるかい? ドラゴンを欲しがっているハグリッドにたまたまで会ったなんて、話が上手すぎると思わないか? どうして今まで気づかなかったんだろう」
ここまで話してもまだ分からないらしく、「何が言いたいんだい?」とロンが聞いたが、シオンもハリーも何も答えず、ハグリッドの家まで急いだ。
彼は家の外にいた。
肘掛け椅子に腰を掛け、ズボンも袖もたくし上げ、大きなボウルに豆の莢(さや)を向いている。
「よぅ、試験は終わったのか?」
けむくじゃらの顔に深い笑みを刻んだハグリッドは、「お茶でも飲むか?」と勧めてくれたが、ハリーが首を振った。
「ううん、僕たち急いでるんだ。ハグリッド、ちょっと聞きたいんだけど……ノーバートを賭けで手に入れた夜のことを覚えてる? トランプをした相手ってどんな人だった?」
唐突の質問に面食らったハグリッドだったが、すぐに記憶を辿りつつ唸る。
「分からんよ。マントを着たままだったしなぁ」
そんな怪しげな相手と賭けをしたのか。
絶句する四人に、彼は眉毛を動かして事もなげに返した。