第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「あらあら。シェリルちゃんたら、よっぽど疲れてたんですね」
芝生に転がってすぐに寝息を立てるシェリルの金色の癖毛を、シャーロットが優しい手つきで撫でた。
「試験結果が出るのは一週間後でしたか。まぁ、その間くらい、頭を使うのは勘弁こうむりたいところですわ」
さすがに、ヒマワリも試験勉強で疲れてしまっているようだ。大きなため息を吐きながら、芝生に横たわって青空を見上げている。
そんな中で、「大丈夫?」とロンがハリーに声を掛けた。
揃って彼を見ると、ハリーが顔をしかめて額の傷を押さえている。
「いったいこれがどういうことなのか分かればいいのに! ずーっと傷が疼くんだ……今までもときどきこういうことはあったけど、こんなに続くのは初めてだ!」
痛みに苛立つハリーの声に、シェリルも目を覚したのか、ハリーに手を伸ばした。
けれど、その手は触れることなく、ギュッと握り締められる。
「ハリー……」
気遣わしげに名前を呼ぶシェリルに、ハリーは少しだけ強がった笑みを見せた。けれど、襲い来る痛みに、彼は再び顔を歪める。
「マダム・ポンフリーのところに行って、痛み止めでももらってきたら?」
「ハリーは病気じゃない。痛いのは頭じゃなくて、『例のあの人』につけられた傷。だったら、マダム・ポンフリーのところに行っても何にもならない。シオンの魔法の方が効く」
ハーマイオニーの提案に淡々と、けれどどこか焦燥感を含んだ声音で言って、シェリルは首を振った。
痛みと暑さからくる汗をハンカチで拭いながら、少女は唇を噛んでいた。
「ありがとう、シェリル」
「……これくらいしかできない、から。ハリー、何か抱えてる? 傷が痛むなんて……何か、あたしたちの知らないところで起きてるの?」
シェリルの問いに一瞬だけ逡巡し、ハリーは痛みを堪えながら微笑んだ。