第18章 姫巫女と禁じられた森
「あなたも、ここまで運んでくれてありがとう」
すると、クイクイッと引っ張るようにして、ユニコーンがシオンのローブを引っ張ってくる。
「あ、待って。あまり乱暴にしたら……」
思った通り、ローブを引っ張ったことで、紫扇と榊の杖が落ちてしまった。
「もう……」
本当に怒って言ったわけではないが、ユニコーンの動きに何かしらの思惑を感じ取ったのも確かだった。
「シオン。もしかして、もっとあなたといたいんじゃないかしら?」
「ユニコーンがここまで人に懐くなんて、珍しいこともあったもんだな」
「シオンが命の恩人だからだよ」
三人に返す言葉もなく、苦笑いで誤魔化しながら扇と杖を拾おうと手を伸ばすと、ユニコーンはシオンの手に鼻先をすり寄せる。
『シオン』
不意に、金色の奇跡を描いて月映が現れた。
「月映さま、どうされたんですか?」
現れた月映は、ユニコーンの周囲を旋回する。ユニコーンの方は、「キュウキュウ」とか細く鳴いて、何かを訴えていた。
『やはり。シオンよ、このユニコーンはそなたと契約をしたいそうだ』
「け、契約⁉」
あまりのことに驚いて声を上げてしまう。
契約――つまり、龍宮に仕える妖として縁を結びたいということだ。
「で、でも……勝手にそんなこと……だって、この子はユニコーンだし……」
ちらりと窺ったのは、ケンタウルスであるフィレンツェだ。
それに、学校の敷地内に住むユニコーンを、勝手に連れて行ってしまっていいのだろうか。
「私が何かを言うことではない。それに、このユニコーンに主人は存在しない。学校が所有しているわけでもない」
「そ、そうですか……」
厳密に言えば、そういったことが聞きたかったわけではなかったのだが……。