第18章 姫巫女と禁じられた森
「力を取り戻すために長い間待っていたのが誰か、思い浮かばないのですか?」
考え込む二人に、フィレンツェは答えを導くヒントを与える。
命にしがみついて機会を窺っていたのは誰か――……。
「ま、まさか……!」
この魔法界に来て、幾度となく聞いた名前――死んだと思われていた人物。
ハリー・ポッターと強い縁を持つ人物だ。
ハリーも同じ答えに辿り着いたらしく、驚愕に瞳を開いて呟く。
「それじゃあ……僕たちが見たのは、ヴォル……」
その名をハリーが最後まで言うより早く、道の向こう側からハーマイオニーとハグリッドがやって来た。
「ハリー、シオン! あなたたち、大丈夫なの?」
二人で顔を見合わせると、ハリーが「うん、大丈夫だよ」と答える。
マルフォイとネビルは、森の外でファングと待たせているらしい。
「おい、シオン。そのユニコーンはどうした?」
驚いた声音で尋ねるハグリッドに、ハリーとシオンはそれぞれ地面に降りた。
「シオンが、襲われて死にかけていたこのユニコーンを助けたんだ」
「ほう! そいつは驚いた!」
「シオン。あなた、もうそんなすごい魔法を使えるの⁉」
「ま、魔法っていうか……」
薬師如来の秘術は、厳密には魔法とは違う。
魔法は奇跡のようなものだが、真言は御仏に頼んで力を借り、加護を授かるのだ。
しかし、そんなことを言っても難しいだろう。
「ここで別れましょう。君たちはもう安全だ」
「ありがとう、フィレンツェ」
「ありがとうございます、フィレンツェさん」
ハリーと揃って礼を言うと、ユニコーンも甘えるようにすり寄って来た。