第18章 姫巫女と禁じられた森
じゃれてくるユニコーンに触れつつハリーへ向くと、そこには一頭のケンタウルスがいた。
「ひゃあっ⁉」
神妙な表情でこちらを見てくるケンタウルスに、シオンは悲鳴を上げる。
ガサガサと音が鳴ったのには気づいたが、まさかケンタウルスだとは思わなかった。
「私の名はフィレンツェだ。少女……ユニコーンを助けてくれてありがとう。素晴らしい奇跡を見せてもらった」
「あ……えっと……い、いえ……死んじゃってたら助けられなかったから……よかったです……」
きっと、あと一瞬判断が遅れていたら助けられなかっただろう。そう考えるとゾクッと悪寒が走る。
「だが、強い癒しの力は狙われやすい。気をつけることだ。それに……」
そう続けて、フィレンツェはハリーへ視線を移した。ケンタウルスの鮮やかな青の瞳は、ハリーの傷痕に注がれている。
「君はポッター家の子だね。二人とも、ここは危険だ。早くハグリッドのところに戻った方がいい。今、この森は安全じゃない。特に君はね」
ハリーに念を押すと、フィレンツェは前足を曲げて姿勢を低くした。
「私の背に乗るといい。その方が速いだろう」
おずおずとフィレンツェの背にハリーが跨ると、ユニコーンもシオンを自分の背中に促す。
「え、乗っていいの? でも、まだあなたは病み上がりだから……」
しかし、ユニコーンは頑として譲らず、シオンに鼻を擦りつけてくる。
「わ、分かった。ありがとう。でも、無理はしないでね……あ、でも、どうしよう……もしかしたらちょっと重たいかも……」
こんなことになるなら、夕食でデザートなど食べなければよかった。
「シオンが重いなら、僕はもっと重いよ」
「そんなことはない。ハリー・ポッター、君ももう少し太った方がいいだろう」
躊躇しながらユニコーンの背中に腰をかける。
毛並みには艶が戻り、一筋ごとにキラキラと光を帯びていた。
「大丈夫?」と声を掛けると、ユニコーンがにこりと微笑んだような気がした。
そこへ、蹄の音が急速に近づき、二頭のケンタウルスが姿を現す。