第18章 姫巫女と禁じられた森
「やぁ、ベイン。元気かね?」
「こんばんは、ハグリッド。あなたも元気ですか?」
ハグリッドが手を上げて挨拶をすると、ベインと呼ばれたケンタウルスも、穏やかに応じた。
「あぁ、元気だ。なぁ、ロナンにも聞いたんだが……最近、この辺で何かおかしなモノを見なかったか? 実はユニコーンが傷つけられてな。お前さんは何か知らんかい?」
すると、ベインは空を見上げ、ロナンと同じ様に「今夜は火星が明るい」と答えた。
「それはもう聞いた」
不機嫌さを隠すことなく短く言って、ハグリッドは大きなため息を吐く。
「もし何か気づいたら、俺に知らせてくれ。頼む。さぁ、俺たちは行こうか」
ハグリッドは声を張り上げ、シオンたちを促した。
「――君は気づいているんだね」
ハグリッドの後ろをついていくハリーたちに一歩遅れるシオンの背中に、ロナンたちが言葉を投げかける。
「気をつけるといい」
「火星の光は、君たちの傍まで届いているかもしれない」
ロナンとベインの言葉は、シオンにしか聞こえなかったようだ。
「シオン、どうしたの?」
「置いて行かれちゃうわ。早く!」
ハリーとハーマイオニーに急かされ、シオンは二人のケンタウルスに頭を下げ、その場を離れた。
* * *
「ただの一度も、ケンタウルスからはっきりした答えをもらった試しがない。忌々しい夢想家よ。星ばかり眺めて、月より近くのものには何の興味も持っとらん」
「そんなことないよ、ハグリッド。ロナンさんたちは、この森の異変に気づいてる。悪いことが起きてるって知らせてくれてたんだよ」
シオンは「火星が明るい」と言っていた意味を教えた。
不吉なことが起ころうとしていると、危機を知らせてくれていたのだと。
やがて、「さて」とハグリッドがシオンたちを見渡す。