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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第18章 姫巫女と禁じられた森


「あぁ……ロナンか。元気かね」

「こんばんは、ハグリッド。……私を撃とうとしたんですか?」

「用心に越したことはないからな。なんか、悪いモンがこの森をうろついとる」

 ハグリッドは石弓を下げ、肩を竦めた。

「ハグリッド、知り合いなの?」

 ハリーの問いに、ハグリッドは「あぁ」と頷いた。

「ロナン、紹介しよう。この子らはホグワーツの生徒だ。みんな、こいつはロナン。ケンタウルスだ」

 それぞれ自己紹介をするシオンたちに、ロナンは「こんばんは」と応じ、次いで空を見上げた。シオンも同じように空を見上げる。
 墨汁を零したような真っ黒な空に散らばる星々の間で、燃えるような赤い星が一際目立っていた。

「――今夜は、火星がとても明るい」

「……――そうですね」

 火星――螢惑(けいわく)星がさそり座の心臓に近い位置にある。これは占星術では凶兆の証だ。
 だが、シオン以外は気づかなかったようで、夜空をチラリと見ただけで首を傾げる。

「ロナン、会えてよかった。ユニコーンが、しかも、怪我をしたヤツがおるんだが……何か見かけんかったか?」

 ロナンはすぐに答えることはせず、しばらく空を見上げてため息を吐き、ようやく悲しげな表情で口を開いた。

「いつでも、罪のない者が真っ先に犠牲になる。大昔からずっとそうだった。そして、今もなお……」

「あぁ、そうだな。それで、何か見なかったか? いつもと違う何かを……」

「今夜は火星が明るい。いつもと違う明るさだ」

 はぐらかされていると感じているのか。
 ハグリッドはイライラとした雰囲気を押さえつつ、質問を繰り返す。

「俺が聞きたいのは火星より、もうちょいと自分に近い方のことだが。お前さんは奇妙な物は何も気づかなかったんだな?」

 ロナンは再び沈黙し、「森は多くの秘密を覆い隠す」とだけ答えた。
 ガサガサと茂みが揺れる。ハグリッドが石弓を構えると、新たなケンタウルスが姿を現した。真っ黒な髪と胴体を持つケンタウルスだ。
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