第18章 姫巫女と禁じられた森
「じゃ、気をつけろよ――出発だ」
「シオン、気をつけてね。無茶しちゃダメよ」
「マルフォイに何かされそうになったら、シオンのモンスターをけしかけるんだ。いいね?」
心配そうな顔をしながら手を振る二人に、シオンも手を振り返す。
「うん、ありがとう。ハリーとハーマイオニーも、気をつけて」
シンと静まり帰った暗い森の分かれ道。シオンはマルフォイたちと右の道へ、ハグリッドやハリーたちと左の道へと入った。
無言で歩きながら、ただ黙々と進んで行く。
ランプとファングの手綱を握るマルフォイが先頭、ネビルはシオンの腕を掴み、少しずつついてきていた。
「おい、リュウグウ」
「ふぇ⁉ あ、はい!」
一瞬変な声を出してしまったシオンに、マルフォイは怪訝そうに眉を寄せながら口を開いた。
「火の玉のモンスターを出せ。ランプじゃ明かりが足りない」
ムッとしつつも、シオンはすぐに《鬼火》を呼び出した。
青玉(せいぎょく)、藍玉(らんぎょく)、蒼玉(そうぎょく)。
三つの青白い炎で周囲が照らされる。周りが明るくなったことで、ネビルも少し気持ちが浮上したようだ。
「ふん。どうせ、ユニコーンを襲っているのは狼男だろ。確か、この森に棲み着いていたはずだ」
「で、でも……狼男のスピードはそんなにないから……いくらなんでも、ユニコーンに追いつくなんて……」
できないんじゃないか、と続けようとしたところで、ネビルが「あ」と声を上げた。
ネビルの指し示した方向を見ると、青みを帯びた銀色の血痕が点々と続いている。