第5章 姫巫女と最初の友達
「それでさ、どんな感じなの?」
好奇心を抑えきれないロンに、ハリーはうんざりと答える。
どうやら、かなり酷い生活を強いられていたようだ。
叔母夫婦からは厄介者扱いされ、その息子である従兄弟からは暴力やパシリなどの横暴を働かれ、食事を抜かれる、物置に閉じ込められるなどは日常茶飯事だったらしい。
その話を聞いて、シオンは絶句した。
そんなことをする人間がいるのかと、逆に疑ってしまう。
しかし、ハリーの手足は細く、その話の一端を窺わせていた。
叔母夫婦は魔法の存在を否定しており、魔法使いの存在すら知らされず、両親は交通事故で死んだと教えられていたらしい。
「僕にも魔法使いのお兄さんが三人もいればいいのにな」
羨ましそうにハリーが言うと、兄たちを指していると分かったロンが「五人だよ」と訂正した。
ウィーズリー家は六男一女に父親と母親を入れた大家族なのだ。
「ホグワーツに入学するのは、僕で六人目なんだ。期待に沿うのは大変だよ」
長男のビルと次男のチャーリーはもう卒業したが、ビルは首席で、チャーリーは魔法競技『クディッチ』のキャプテンだったそうだ。
さらに、三男パーシーは監督生で、四男五男のフレッドとジョージは、悪戯好きだが成績優秀。
「僕もみんなと同じように優秀だって期待されてるんだけど、もし僕が期待に応えるようなことをしたって、みんなと同じことをしただけだから、大したことじゃないってことになっちゃう。それに、五人も上にいるから、なんにも新しい物がもらえないんだ」
ロンの話によると、制服のローブはビルのお古で、杖はチャーリーが使っていた物。
ペットもパーシーのお下がり。
話しながら、彼は上着のポケットに手を突っ込んで、太ったねずみを引っ張り出した。
動かされても動じることなく、ぐっすりと眠っている。
「スキャバーズって名前だけど、役立たずなんだ。寝てばっかりだし」
パーシーは監督生になったため、父にふくろうを買ってもらったらしい。
あまりに家の事情を話しすぎたと感じたのか、ロンは恥ずかしそうに顔を赤くした。