第5章 姫巫女と最初の友達
「ゲツエイって、シオンの使い魔でしょ? 何で『さま付け』で呼んでるの?」
「使い魔って、手下みたいな?」
自分の認識と魔法界での認識を確認したハリーも首を捻る。
普通に考えて、使い魔が主人に敬称を使う意味は分かるが、主人が使い魔に敬称を使うのはおかしいだろう。
それでも、シオンと月映の関係を、おいそれと簡単に話すことはできなかった。
困惑する主を見て、月映は赤い瞳を細める。
『我とシオンの関係は、ただの主人と使い魔ではない、とだけ言っておこう』
空気がやや重たくなり、ハリーはロンに話を振った。
「ロンの家族は? やっぱり、みんな魔法使い?」
ウィーズリー家のことは、シオンも話に聞いたことがある。
魔法界では有名な純血の一族で、全員が燃えるような赤い髪を持っているのだ。
純血であることにこだわらず、マグルに対して肩入れしているとして、一部の純血主義者からは『血を裏切る一族』として侮蔑されている。
もちろん、シオンも純血主義などといって、マグルやマグル生まれの魔法使いを蔑ろにする考えは馬鹿らしいと考えているが。
「あぁ……うん、そうだと思う」
『ハリーよ。そなたは只人(ただびと)と暮らしておったのだったな』
「タダビト?」
「あ、マグルのことです」
魔法と関わりのない一般人のことを、龍宮では『只人』と表現している。
「シオン、敬語なんて使わなくていいよ。堅苦しいしさ」
ロンに指摘され、シオンは「あ」と声を上げた。
まだ緊張している中で、シオンはどうにか、「そうだね……」と言葉を紡ぐ。