第5章 姫巫女と最初の友達
先代の『龍宮の姫巫女』は、父の母親――つまり、シオンの祖母に当たる。
彼女は一人息子を異国の学校へ通わせることを憂い、月映をつけたのだ。
だが、月映は姫巫女の守護。
主の傍を離れるわけにはいかず、シオンの父には分身をつけていたのだった。
しかし、シオンの父は、近代の姫巫女に比べれば力を持っていたものの、分身とはいえ、月映を長時間顕現させておくことはできず。
月映が把握できたのは、シオンの父のだいたいの生活の状況程度だったようだ。
「へぇ……じゃあ、シオンはすごいんだ!」
ロンの賞賛に、シオンはますます恐縮して肩を縮めるが、月映は嬉しそうに何度も頷く。
『然様。シオンは歴代姫巫女の中で唯一、初代に匹敵する強者(つわもの)よ!』
そう誇らしげに胸を張り、月映は『龍宮の姫巫女』について二人に説明した。
『龍宮の姫巫女』とは、教会の聖女のようなもので、龍宮神社の祭神である『王龍』に仕える巫女のことだ。
龍宮には、数多の妖怪や神獣が仕えており、その血を引く者ならば、それらを呼び出して使役できる。
そして、姫巫女は妖怪や神獣以外に、一族の中で唯一、祭神である『王龍』を呼び出すことができた。
また、神の力すら借り受けることもできるが、それは素質がなければ叶わず、姫巫女の中で神をも降ろすことができるのは、初代を除けばシオンだけである。
「月映さま、それ以上は……」
あまりにも大げさに語る金色の蛇を止めようとすると、ロンが「ねぇ」と声を掛けた。