第17章 姫巫女とドラゴン
「もうすぐだ!」
一番高い塔の下の階段に辿り着き、ハリーが息を切らしながら言った。
その瞬間――目の前で何かが動き、シオンは身体を強張らせる。ハリーとハーマイオニーに促され、三人は物陰に隠れた。
数メートル先で、二人の人間が何か揉めているようだった。
二人の間でランプの炎が燃え、その姿を浮かび上がらせる。
タータンチェックのガウンを着て、頭にヘアネットを被ったマクゴナガルが、マルフォイの耳を掴んでいた。
「罰則です! さらに、スリザリンから二〇点の減点! こんな真夜中にうろつくなんて、なんてことです……!」
「先生、誤解です。ハリー・ポッターが来るんです……ドラゴンを連れてくるんです!」
マルフォイが必死に訴えるが、「なんというくだらないことを!」と聞く耳を持たない。
「どうして、そんな嘘を吐くんですか! いらっしゃい……マルフォイ。あなたのことで、スネイプ先生にお目にかからなければ!」
三人は互いに顔を見合わせて二人をやり過ごし、姿が見えなくなったところで塔の天辺まで急いだ。
螺旋階段を軽やかな足取りで登り、夜の冷たい空気に一歩踏み出したところでハリーたちは透明マントを脱ぐ。
シオンも肩の力を抜き、術を解いた。
「マルフォイが罰則を受けたわ!」
「うん! なんだか胸がスッとするね!」
いつも嫌味ったらしく突っかかってくるマルフォイには、シオンもうんざりしていたのだ。
歌でも歌い出しそうなハーマイオニーをハリーが止めるも、喜びを隠せないのか、彼も笑いを堪えられないようだった。
クスクスと笑う三人の傍では、ノーバートがガタガタと木箱を内側から揺らしている。