第17章 姫巫女とドラゴン
翌週の時間は、やけに長く感じた。その週の水曜の夜、皆が寝静まった頃、シオンはこっそりと部屋を抜け出し、談話室へとやってきた。
「ハリー、ハーマイオニー。まだ起きてたの?」
時刻は午前〇時。消灯時間はすでに過ぎている。
「えぇ。シオンは?」
「うん、何だか気になって……ロンは?」
ハーマイオニーに答え、シオンは談話室を見渡す。
ハリーとハーマイオニーの姿はあるが、ロンがいないのだ。
「まだ帰って来てないんだ」
同室のハリーが心配そうに緑色の瞳を揺らしながら、眼鏡を上げる。
ロンは今、ハグリッドの小屋でノーバートに餌をやる手伝いをしているはず。すでに食欲は凄まじく、木箱に入れた死んだネズミを何杯も食べるようになっていた。
そこへ、肖像画の扉が開く音が聞こえ、どこからともなく、唐突にロンが現れた。
「ロン、心配したよ」
ハグリッドのところへは、ハリーの透明マントを使っていたのだ。
駆け寄ったシオンは、すぐに彼の異変に気づく。
「ロン、その手……」
「噛まれちゃったんだ」
ハンカチにくるまれたロンの手は、ぐっしょりと血で濡れていた。
「一週間は羽ペンを持てなそうだ。全く、あんな恐ろしい生き物を見たことないよ。ヤツが僕の手を噛んだというのに、ハグリッドは僕がヤツを怖がらせたって叱るんだ。僕が帰るとき、子守唄を歌ってやってたよ」
「明日の朝一番で、マダム・ポンフリーに診てもらった方がいいよ」
ハリーが言うと、ロンはゆるゆると首を振る。ロンがハンカチを解くと、手は腫れ上がり、緑色に変色していた。
「これ、毒じゃない? きっと、ノーバートの毒にやられてるのよ!」
マダム・ポンフリーに診てもらおうにも、噛み痕は誤魔化しようもないし、どこで怪我をしたのかという質問にも答えようがない。