第17章 姫巫女とドラゴン
「どうしたの、ゲツエイ?」
ロンが首を傾げて尋ねる。
『人の子がおったのよ。あれはドラコ・マルフォイだろうな。今朝もお前たちを気にしておった』
「そんな……じゃあ、ドラゴンも……」
『おそらく、見られたと思っておった方がいいだろう』
最悪だ、とハリーが呟いた。
マルフォイはハグリッドのこともあまりよく思っていない。
すぐにでも教師たちに告げ口する可能性もあるだろう。
「ハグリッド、外に放せば? 自由にしてあげなよ」
「そんなことはできん。こんなにちっちゃいんだ。死んじまう」
ハグリッドの言い分だって分からないわけではない。
野生の動物だって、親がいるから生きて行けるのだ。
けれど、このドラゴンの赤ちゃんには頼れる親も何もない。
「この子をノーバートと呼ぶことにしたんだ。ノーバートや、ノーバート! ママちゃんはここだよ」
手を叩いてノーバートを呼ぶハグリッドを見て、ロンは「狂ってるぜ」とげんなりした表情を見せた。
「ハグリッド。ノーバートはすぐにこの家くらい大きくなるわ。それに、マルフォイがいつダンブルドアに言いつけるかだって分からないのよ?」
「そ、そりゃ……俺も、ずっと飼っておけんぐらい分かっとる。だけんど、ほっぽり出すなんてことはできん。どうしてもできん」
ハーマイオニーに、ハグリッドは駄々っ子のようにして首を振る。
これではまるで、拾った犬を捨てるように言われている子どものようではないか。
「そうだ、ロン。君のお兄さんにノーバートを預けて、面倒を見てもらえないのかな? 自然に帰れるように」
「すごい、ハリー! 名案だよ。ロン、どう?」
そう言えば、初日のコンパートメントでロンが話していた。ロンの兄の一人であるチャーリー・ウィーズリーは、ルーマニアでドラゴンの研究をしているという。彼ならばノーバートを預けても安心だ。
「うん、僕も賛成だよ。すぐにチャーリーに連絡をとってみる」
その後、シオンたちはハグリッドを説得し続け、とうとう彼は、チャーリーにふくろう便を送ることに同意をした。
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