第5章 姫巫女と最初の友達
「それじゃあ、これが『例のあの人』の……?」
「うん。でも、何も覚えてないんだ」
「何も?」
聞き返されたハリーは、目を彷徨わせて記憶を辿る。
「そうだな……緑色の光がいっぱいだったのは覚えてるけど、それだけ」
しばらく沈黙が続き、やがてハリーは口を開いた。
「君たちの家族は、みんな魔法使いなの?」
「え、えっと……そう、ですね。一族はみんな魔法使いです」
緑色の瞳と目が合い、シオンは戸惑いながら答える。
龍宮一族――特に直系は純血の血筋だ。
大昔に、奇妙な力を持つと人々から迫害されたことがあり、山の中の神社で暮らしているのだと伝わっていた。
そのためか、一族の中には、マグルに強い嫌悪を抱いている者も少なくはない。
シオンの場合は、接したことがないための恐れの部分が大きいが。
『もっと堂々としろ、シオン』
シオンの背後から、金色の蛇のような赤い瞳の生き物――月映が現れた。
『小僧たちよ、聞いて驚け。この者はただの気弱な娘ではない。初代に匹敵する素質を持った、「龍宮の姫巫女」よ!』
まるで自分のことのように誇らしげに月映は語るが、ハリーとロンは突然出て来た金色の蛇にポカーンとしている。
「げ、月映さま、止めて下さい!」
『何を止めるか。ここで侮られては「龍宮の姫巫女」の名が泣くぞ』
「ねぇ、えっと……ゲツエイ? その、『リュウグウのヒメミコ』って何?」
『我を呼び捨てとは……その度胸は父親譲りか、ハリー・ポッター』
「え、僕の父さんを知ってるの?」
『詳しくはないがな』
身を乗り出してハリーが月映に迫るが、シオンも同様に驚いていた。
月映からハリーやハリーの両親の話など聞いたことがなかったからだ。
けれど、よく考えれば、知っていても不思議ではない。